ALO,ALO,BRASIL

名曲アルバム:003

Asa Branca/アザ・ブランカ

text by 《DINO》

 ブラジルの第2の国歌とも言われる名曲。1947年にルイス・ゴンザーガが録音し大ヒットしたものです。当時ブラジルでは、外国の音楽(ジャズやタンゴ、ボレロ)が流入し、サンバやショーロといった音楽が低迷していた時期でした。また、世界恐慌以降、北東部で食い詰めた人たちが南部の都市に仕事を求めて大量に移動していた時期でもあります。そんな中で、ある種のナショナリズムの高まりと、故郷を離れて暮らす労働者の増加の中で、ゴンザーガの1946年「バイヨン (Baião)」の大ヒットが生まれました。「バイヨン」に続いてヒットした「アザ・ブランカ」は、バイヨンの人気が失速した後も歌い継がれることになり、特に60年代後半、トロピカリズモによるブラジル性の見直し、カエターノやジルたちが北東部のリズムを自分たちの音楽に取り入れたことなどから、このジャンルが再認識され、ゴンザーガ自身の再評価にも繋がることになりました。

ゴンザーガ自身は、北東部のペルナンブーコ出身で、40年前後から本格的にプロのアコーディオン奏者として活動していました。作詞は、ウンベルト・テイシェイラ。彼も北東部の出身で、この二人がリオで出会い、北東部音楽を代表する曲を次々に生み出していったわけです。

「アザ・ブランカ」は白い翼と訳されていますが、実際は鳩に似た鳥の名前。歌の内容は、故郷の旱魃で仕事を求めて遠く離れた街で働く男の想いを描いています。「地面は乾いて、牛も栗毛も死んでしまった。アザ・ブランカも逃げていった。俺も今は遠く離れてはいるけれど、心はホジーニャのもの。君の目が緑を見る時には、必ず戻って農園に苗木を植えるから、待っていてくれ。」大体こんな内容です。

曲はシンプルというよりもむしろ単調なほどですが、詞の内容を知って聞けば、この主人公のやり切れなさや辛さがジワーッと伝わってくるはずです。

ゴンザーガの音楽については、連載中の北東部音楽入門をぜひ読んでみて下さい。
>>北東部音楽入門(第2回)

それでは、アルバム紹介です。

1:ルイス・ゴンザーガ/ヴェロニカ

 やはり、まずオリジナル録音を聴いておきましょう。
最近ブラジルのREVIVENDOレーベルから出たCDで聴くことができます。

2:Dominguinhos & Convidados/Canta Luiz Gonzaga

 ゴンザーガの一番弟子、ドミンギーニョスが満を持して出したゴンザーガ集。2枚組の大作の冒頭を飾ったのはやはりこの曲。堂々の正統バイヨンの力強さを聴いてください。

3:カエターノ・ヴェローゾ/イン・ロンドン

 カエターノがロンドン亡命中に作ったアルバム。アルバム中この曲だけをポルトガル語で歌っています。7分を超えるトラックには、単なる望郷の念だけではない彼の想いが重ねられています。ワードレスで歌う部分は、単なるオリジナルの解釈ではなく、言葉を封じられること(検閲)への痛烈な抗議でもあるのです。

4:エリス・ヘジーナ/モントルー・ジャズ・フェスティバル

 1979年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの録音。エルメート・パスコアールのピアノとのジャムセッション。エルメートの作る空間の中で自由に泳ぐエリスが聴けます。

5:Gonzaguinha/cavaleiro Solitario

 ゴンザーガの息子、ゴンザギーニャの死後発売されたライブアルバム。自らの弾き語りで淡々と歌っています。父親の世代とは違う世界との対峙のし方をよりリアルな形で表現すればこんな風になるんだろうなぁ。彼は、最後のアルバムで豪華ゲストを迎えてこの曲を録音していますが、そちらが公式の亡き父への追悼だとすれば、このライブでの録音はもっとパーソナルな彼自身と父親とのあり方を捉え直すための歌のように思えます。この数ヶ月後不慮の事故で亡くなってしまうとは......。

6:Waldir Azebedo/Delicado & Umberto Teixeira/Brasilia

番外編

 ショーロのカヴァキーニョ奏者、ワルヂール・アゼヴェドの演奏。妙にエコーの効いたカヴァキーニョはまるでスチールギターのようで、トロピカルぅって感じ......

と、思ってたら、ほんまもんのスチールギターでの演奏がありました。それもなんと、作者の一人ウンベルト・テイシェイラ率いる楽団による演奏。もうほとんどプールサイド直行って感じです。セルタンの旱魃はどうなったんだ????