ALO,ALO,BRASIL

名曲アルバム:002

Garota de Ipanema/イパネマの娘

text by ひがしの

 1990年に行われた調査によれば「イパネマの娘」は、歴史上5番目に多く演奏された曲であるという。当然それより上位はビートルズ。ジョビンは言う。「でもね、彼らは4人で、しかも英語で歌うんだ」。ジョビンが自ら言うように、ジョビンがいたからこそ今日のブラジル音楽人気があるのだ。少なくとも僕はジョビンがいなければこんなにブラジル音楽にのめり込むことは無かっただろう。驚くような転調を繰り返しながら展開していくメロディー。海岸を歩く美しい少女と、自分の孤独感を対比させたヴィニシウスの歌詞。そう、この曲はジョビンとヴィニシウスが共作した最後の作品のひとつでもあるのだ。彼らの別れの曲であり、ボサノヴァの金字塔。

それでは、アルバム紹介です。

1:スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルト/ゲッツ・ジルベルト

まずはこれを聴かずして話は始まらない。ジョアンの奥さんだったアストラッドが、たまたま歌ったこのヴァージョンが世界的に大ヒット。シングルではジョアンの歌がカットされていますが、このアルバムではフルヴァージョンで聴けます。

2:ジョアン・ジルベルト/ライヴ・イン・モントルー

ジョアンのライヴ盤のなかでも音質、演奏ともに極上のこのアルバム。ボサノヴァの神が、たんたんとこの名曲を演奏しています。とはいえ随所に「はっ」とさせるアレンジが施されていて、一筋縄ではいきません。

3:バーデン・パウエル/アヴォンタージ

ジョビンやジョアンのヴァージョンとは全く違った解釈のアグレッシヴな演奏。これはボサノヴァではないのかもしれません。ギタリストでこれを聴いたことない人はすぐに聴いてぶっとんでください。

4:フランク・アルバート・シナトラ&アントニオ・カルロス・ジョビン

ボサノヴァ人たちが最もあこがれていた歌手シナトラが、ボサノヴァを歌ったアルバム。このアルバムのヴァージョンではシナトラが英語、ジョビンがポル語という変則的な形態でデュエットを聴かせてくれます。ボサノヴァの歴史的には意味深い作品。

5:アントニオ・カルロス・ジョビン/イネージト

最も後期に録音されたジョビン本人によるヴァージョン。それまでに演奏されてきたさまざまなアレンジが組み合わされた組曲的な作品。

6:ホーザ・パッソス/カンタ・アントニオ・カルロス・ジョビン

新しいところで一枚。現代のボサノヴァ・プレイヤーではピカ一の存在、ホーザ・パッソスのジョビン集。落ち着いたジャジーなアレンジでこの名曲をしっとり歌っています。


(*)参考文献
「アントニオ・カルロス・ジョビン---ボサノヴァを創った男」青土社 著者 エレーナ・ジョビン / 訳 国安 真奈