ALO,ALO,BRASIL

名曲アルバム:001

Aguas de março/3月の水

TEXT BY E・しんくれ~る

南半球に位置するブラジルではすべてが日本と正反対。北極星のかわりに南十字星が輝き、ブラジルが夏なら、日本は冬。洗面台の水は左回りに流れてゆくし、スピード狂の車は右側通行(?)。ブラジルで3月といえば、日本の9月に相当します。つまり超名曲「3月の水」は、夏の終わり、秋の始まりを歌っています。知リ合いのブラジル人は、「3月は雨が多かったわね。」と故郷を思い出して言いました。そんなところは日本に似ているのかもしれません。

「3月の水」の作曲者はアントニオ・カルロス・ジョビン。1972年、45歳の時に、ポッソ・フンドという緑の多い郊外の静かな家で深夜に作られました。アルバム「マチッタ・ペレー」の製作に行き詰まっていたジョビンの頭に、突然の贈り物のようにその曲が浮かびあがってきたそうです。

ジョビンの伝記を読むと、彼がどのように自然とふれあい、自然を愛していたか、繰り返し描かれていることに気づくでしょう。一人で森の中へ入ってゆくと、音楽が聞こえてきたそうです。

もっと詳しく知りたい方は、ジョビンの妹が書いた彼の伝記を読んでみてくださいね。(*)

それでは、アルバム紹介です。

1:エリス・レジーナ/アントニオ・カルロス・ジョビン「エリス&トム」

74年 Verve ロサンゼルス録音。二人の天才が作ったボサノヴァアルバム。リラックスした雰囲気が心地よい。この「3月の水」ほど有名なヴァージョンはないでしょうね。未発表テイクもあるらしいです。

2:ジョアン・ジルベルト「3月の水」

73年 Polydor 誰にも真似できないジョアン・ヴァージョン「3月の雨」。多彩なリズムと豊かで完璧なハーモニーで飽きさせません。清潔感のあるドラムも好き。ジョアンのアルバムは、聴き手にも適度な緊張感を求めてきます。

3:ナラ・レオン「イパネマの娘」

85年 PHILIPS 85年、日本録音。すでに病に侵されていたナラだが、ナラの声には余裕があり、表情も明るい。

4:ネイ・マットグロッソ「O cair da tarde」(夕暮れに、の意)

97年 Mercury(ブ盤)このアルバムはヴィラ・ロボスとA.C.ジョビンの作品集。色物扱いされがちなネイですが、ミナス出身のパーカッショングループ、ウアクチの参加で、美しい作品に仕上がっています。この「3月の水」は新鮮!あなたもネイの完璧な演出にはめられて下さい。

5:アントニオ・カルロス・ジョビン「matita perê」

73年 PHILIPS これが本家本元オリジナル。ゆっくりめのテンポで、ぼそぼそした歌い方には驚く人もいるかも。他の曲もボサノヴァではない。

6:A.C.ジョビン&バンダ・ノーヴァ「FAMILIA JOBIM」

93年 MOVIEPLAY これを聴くと、何度もビデオで見たジョビンの来日公演を思い出す。日比谷野音でのステージで、刻々と変わってゆく空の色、風でそよぐ周囲の木々が印象的だった。ジョビンとバンダ・ノーヴァの息のあった気持ち良い演奏。


(*)参考文献
「アントニオ・カルロス・ジョビン---ボサノヴァを創った男」青土社
著者 エレーナ・ジョビン / 訳 国安 真奈