ALO,ALO,BRASIL

「エウ トゥ エリス」鑑賞レポート
2000年10月31日(火)

text by かわべ

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第13回東京国際映画祭において10月29日(日)、31日(火)のたった2回だけ、ブラジル音楽ファンにはとても気になる作品「エウ トゥ エリス」が上映された。そんな私もジルベルト・ジルによるサントラ擬きを聴きながらブラジルのノルデスチに思いを馳せていたのでこの日を長く待ち望んでいた。CDのジャケット写真見ているだけではなんの映画なのだかさっぱり分らなかったのだが、見てみると実にユニークな作品だった。

大雑把な内容は、
混血女のダルレーニはある日、オゼイアスという初老の男性と結婚する。しかし、次から次に浮気(ダルレーニ本人は浮気とは思っていない?)を重ね、終いには夫と2人の愛人、子供3人との奇妙な共同生活を送る事になる...。御存じの通り、舞台はブラジル北東部の田舎で、そこにはひたすら何も無い。ダルレーニは朝の6時から5時まで砂糖キビ畑で働き、夫のオゼイアスは「混血女は丈夫なんだ。」と言って憚らず、妻の働きを当てにしてハンモックに揺られながらラジオを聴いて過ごす日々。水は池というか水たまりからバケツで汲んでくる。洗濯もその池で洗うのだが、白いものは全て茶色になる。唯一の愉しみはバールに行き、フォッホーの演奏で踊る事くらい...。なんて書いてると悲愴感漂う映画のようだが、登場人物はひたすら明るくとても逞しい。
観客もそんなあっけらかんとした雰囲気が楽しくて仕方が無い、といった感じだ。

そんな奇妙で愉快な内容なのだが、面白いのは監督が「夫と2人の愛人と仲良く暮らしている女性」の話しをラジオで聴いたのをヒントに脚色して作り上げたと言う事だ。こんな不思議な話が実話を元にしているとはとても興味深い。 実在するの?!なんて。
というかこんな話は作り話じゃ思い付かない?

ジルのCDは映画のメインテーマの他、映画のラジオやバールなどから流れてくる曲をスタジオで一流のミュージシャンにより録音された、という事が映画を見てやっと分かった。
映画の中で流れる曲はジルのそれより荒削りで生々しいのだが、埃っぽくて汗臭そうなノルデスチにはその方がとっても似合っていた。

映画の上映後は監督のアンドルッシャ・ウッディントンと美術監督トニ・ヴァンゾリーニが登場し、「ティーチ・イン」なる質問コーナーが設けられた。そこでは撮影に入るまでに数カ月リハーサルを積んでいた事や、劇中の建物や道具はセットを古く見せる為に汚したりしたのでは無く、新品を持って行って現地の人に「物々交換」してもらった、などという事が明かされた。また、日本在住のブラジル人からは「ブラジル映画というとことさら貧しさを強調したものが多く、それに対して少なからず不満を抱いている」という意見が出たが、前述の通りヒントになった話しがノルデスチだった為に監督本人は敢えて貧しさを強調しようとするつもりは無かったらしい。

内容も面白いし、どのシーンも構図・色彩がとても美しい。ジルの音楽やラジオ・バールのフォッホーも楽しい。こんな映画たったの2回じゃ勿体無いよね?


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