ALO,ALO,BRASIL

比屋定篤子(12/17/99)

text by ウリボッサ

“去る12月7日、大阪ミューズホールで行われた比屋定篤子さんのライヴに想う”

そんなに広くないミューズホールにあまり多くない観客。比屋定篤子+笹子重治という最強のユニットをこんな少ない人数で聴いてしまっていいのか?という贅沢な気分と、あぁ、世のリスナーはホンモノを嗅ぎ分ける能力にまだまだ欠けているんだなという無念さが、ない交ぜになった心境。

さてライヴは「七色神話」で幕を開けた。ほぼ1曲ごとに入るMCは、まるで友人宅でのパーティのような気軽さ。ギターの笹子氏のポワンとした語り口に、篤子さんがシャキッと応えるわけでもなくサラサラと次の曲へ進んでいくのだが、ひとたび楽曲に入るやいなや彼女の、アルバムで聴くよりも意外とふくよかな声質と、その歌の持つ情景にグイグイと引き込まれて行く。ショーアップされたステージもいいが、こんな素朴なライヴも本当に気持ちがいい。篤子さんの圧倒的な存在感は言うに及ばずだが、アルバムアレンジをたったギター一本で見事に再現させる笹子氏の力量といったら、、、。

途中からトロンボーンで参加された村田陽一氏には、一瞬その場の雰囲気にそぐわないのでは、、、という危惧も感じたのだが、微妙な音程を取るのが難しそうな楽器の音色は、一曲目が終わる頃には、すっかり馴染んでしまいこんなトリオも悪くないと感じた。

今回、私のまったく知らない「Fairground Attraction」のカバーを2曲歌われたが、どんな曲を歌っても篤子さんスタイルである。当初は「ボサノヴァを日本語で歌うアーティスト」として注目し、3枚のアルバムを聴いてきたが、今はもうすっかり彼女のペースにはめられて、頭の中は「比屋定篤子」というジャンルが出来つつある。

そしてやはり見逃せないのは、作曲者の小林治郎氏の存在。彼のメロディには、まるでビートルズのそれのように「駄作」という言葉が無く、メロディアスで、心地よい転調に富み、見事に篤子さんにマッチしている。いったいこのコンビはどこまで突き進むのであろうか?などという想いを巡らせるうちに、濃密でしかしサバサバした美味しい時間はアッと言う間に過ぎて行った。

沖縄の童謡的な歌「てぃんさぐぬ花」もシミジミと良かった。「ホウセンカの花は 爪の先に染めて、親の教えは 心に染めましょう」という内容の歌詞も、この歳になると妙に心に残る(私事で失礼)。そして、私も篤子さんの歌声を胸に染めて、会場をあとにした。


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