ALO,ALO,BRASIL

ヴィニシウス・カントゥアリア(11/09/99)

text by masubuchi
obaia@hotmail.com

場所 ブルーノート東京

日時 平成11年9月11日土曜日 ファーストステージ

演奏者

待望の来日。米国のメジャーレーベルに移籍して最初のアルバム「トゥクマン」が話題騒然のヴィニシウス・カントゥアリア。アルバムリリースした直後に、NYのニッティング・ファクトリーで一夜限りのショーをやったけど、その後初めてのショーなのかな、もしかして。

個人的には、久しぶりのブルーノート、もちろん移転してから初めて。なんか、前にも増してバブリーな雰囲気に。客層は、純粋に音楽を楽しもうという客だけじゃなくって、おばさまとホスト風とか、ジャズ=お洒落って勘違いしてるような恋人達とか、何だかそういう人も結構いて、やっぱりここは昔と変わってないみたい。

ステージに目をやると、セミアコの電気ギターとヴィオラン。最新アルバムの1曲目「アモール・ブラジレイロ」でのビル・フリーゼルの浮遊感漂う電気ギターとヴィニシウスのヴィオランのあのサウンドを連想して、心臓がどきどきしてしまったけど、よく考えてみれば、ギター弾くのは彼ひとりだけのはず。結局、前作にも収録されていた彼自身も好きであろう僕の大好きなこの曲は演奏されなかったのでした。

彼の演奏と唄は、驚くほど音量が少ない。それにヴィオランの腕はお世辞にもうまいとは言えない。しかし、本来テクニックとは、本人のイメージ通りの音が出せるか否か、という一点にのみ本質があるとするならば、彼は紛れもなくテクニシャンだ。

ボサ・ノヴァってこんな音楽なの、と頭の上にクエスチョン・マークをいくつも浮かべていた僕の前に座っているカップル。彼の音楽は少なくとも彼らの想像するボサ・ノヴァではないし、ましてや、ステレオタイプな「ラテン」を期待してきたのなら、ちょっと的はずれだったろう。

そういう周りの雰囲気に加速されて、私は彼の世界に引き吊り込まれていく。生々しい皮膚感覚で迫ってくる消え入りそうに小さな声、指と弦の間の摩擦音かと勘違いしそうな音量のサウンド、曲の途中でもステージを出たり入ったりしているサポートメンバー。僕のためだけに歌い演奏してくれているかのような、あるいは、スタジオでの練習に紛れ込んでしまったような、そんな錯覚に陥りそうなリラックスした雰囲気でした。

サポートメンバーは、ピアニカがなかなかいい感じだったマイケル・レオンハルト(トランペット等担当)、陽気なおっさんふうのパウロ・ブラーガ(ドラムス、打楽器担当)、前衛的奏法でせまるマリー・ウーテン(チェロ担当)。関係ないけど、チェロっていう楽器は、連続的な音程が出せたり、人間の声に近い周波数っていうことが原因かも知れないけど、不思議な力が宿ってるのかな。ナムジュンパイクの弟子を思い出した。

7 Cordas / Sem Pisar No Chao / Ligia / Sol Na Cara / Vino Isolado Do Mundo / 7 Cordas / O Nome Dela / O Baraquinho / Pra Gil / Joia / Esse Seu Olhar / Tucuma

9月6日のファースト・ステージの演奏曲目は、こんな感じだったようです。私の行った11日も、順番は多少違っていましたが、ほとんどこれと同じでした。

彼のあの独特のハーモニー、考えながら左手のポジショニングをするので、ちょっとテンポがずれる。サポートメンバーのキープされたリズムとのズレが彼独特のサンバ、ボサ・ノヴァの肝だと言っても良いのではないでしょうか。前のりのボサ・ノヴァ的要素ともたれ気味のジャズ的要素が共存している。でも、一人でその両方をやっているから、シナトラとジョビンのアルバムのようなミスマッチ感は無い。

次々と繰り出されるサウンド。ブラジルの荒涼とした大地の灼熱感、リオのさわやかな潮風、ニューヨークの寒々しい冬空、メトロポリタン的な猥雑感。まるで、映像を目の前にしたミュージシャン達が映像の印象を即興で表現しているかのような印象を受けた。もちろん、CDのサウンドを再現しようという気は毛頭ないのは明らか。同じ曲をやっていても、毎晩全く違うサウンドであったに違いない。

そして、最後には、打楽器を手に手に、サンバを歌いながら客席の中を通り抜け、ショーは幕を閉じたのでした。

ファースト・ステージが終了後、聴きに来ていた実力派ベーシストのルイゾン(日本に住んでるのかな?誰か知ってますか?)と一緒に雑談していた彼と、ほんとに短い時間だったけど、話すことが出来たのでした。

「あなたの音楽ずっと好きでした。アウトラ・バンダ・ダ・テーハとか、それに最近のアルバムも。」
「アウトラ・バンダ・ダ・テーハ!ははは。」
「もうカエターノとは、一緒にやらないのですか?」
「そんなことはないよ。実際、2年前のモントリオール・ジャズ・フェスティバルで一緒にやったしね。」
「ほんとですか?!じゃあ、近い将来、また彼と演ってくれますか?」
「うん、やるやる。」
「絶対行きます!!!!!」
「次も聴いてくんだろ?」
「もちろん!!」

とは言ったものの、次を聴くには、もう一度7000円払えって店員に言われてしまったので、残念ながら、出て来ちゃいました。1時間ちょいの演奏時間、短すぎだよね。完全入れ替え性だって演奏する側は知らされているのかな?今度は是非サバスに来て欲しいものです。


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