ALO,ALO,BRASIL

アルバムレビュー:008

SUBA - SÃO PAULO CONFESSIONS

text by masubuchi
obaia@hotmail.com

ZIRIGUIBOOM ZIR 03CD / 2LP

  1. TANTOS DESEJOS (So Many Desires)
  2. VOCE GOSTA (I Know What You Like...)
  3. NA NEBLINA (In The Fog)
  4. SEGREDO (Secret)
  5. ANTROPOFAGOS (Cannibals)
  6. A FELICIDADE (Happiness)
  7. UM DIA COMUM (EM SP) (A Normal Day (in Sao Paulo))
  8. SEREIA (Mermaid)
  9. SAMBA DO GRINGO PAULISTA (Paulista Gringo's Samba)
  10. ABRACO (Embrace)
  11. PECADOS DA MADRUGADA (Sins Before Dawn)
  12. A NOITE SEM FIM (The Endless Night)

Core group: Cibelle-vocals and Joao Parahyba-percussion.
Guest vocalists Katia B., Taciana, Joana Jones, and Arnaldo Antunes.
Other guests: Roberto Frejat-guitar, Edgar Scandurra-guitar, Andre
Geraissatti-guitar and Mestre Ambrosio,

 かつては、リオっ子であるヴィニシウス・ヂ・モライスに「サンバの墓場だ」などと馬鹿にされていたサンパウロ。しかし、音楽に限らず多岐に渡る分野で、あらゆるものを飲み込み、賛否両論を巻き起こす活動をしたトロピカリズモと密接な関係を持ったのはリオではなくサンパウロだった。プログレ、現代音楽、ジャズ、英米ポップなどを凝縮させ、唯一無比の作品を創り上げるアヒーゴ・バルナベーも活動の拠点はサンパウロだ。複数の物語、非連続な断片の集積。そんなサンパウロのポスト・モダンなイメージにテクノ~電子音楽はよく似合う。

 ここで紹介するのは、サンパウロ生まれでニューヨークを拠点に活躍するプロデューサ、ベコ・ドゥラノフをブレインとしたベルギーのレーベルからリリースされたサンパウロ在住のユーゴスラビア人スバのアルバム。彼は、メストリ・アンブロージオのメジャー移籍アルバム "fua na casa de caBRal" のプロデュースを行った要注目人物だが、僕にとっては、それよりもなによりも、ブラジル人たちの今を伝える好コンピレーション「Brasil 2mil」(ZIR02)において、ベベウ・ジルベルトとともに同レーベルから近日アルバムリリースと記載されていた人という印象の方が強い。それがこのアルバムだ。

 ここでの彼はサウンドづくりに徹し、曲ごとに迎えるゲストを主役にして、多彩な曲で楽しませてくれる。元チタンスのアルナルド・アントゥネス("90年代のARACA AZUL" とでも言えるようなソロ・デビュー作品"NOME"は必聴です!!!)がラップともポエトリー・リーディングとも言えるようなボーカルで圧倒的な存在を誇示する"ABRACO"、メストリ・アンブロージオのテクノ・ノルデスチ"ANTROPOFAGOS"。伝統的スタイルのサンバを軽くリミックスした"SAMBA DO GRINGO PAULISTA"。揺らぎを孕んだミニマムなギター・フレーズが個性的な"A NOITE SEM FIM"。打楽器奏者ジョアン・パライーバをバックにシビル、タシアーナ、カティア・Bという女性歌手が歌う"TANTO DESEJOS", "VOCE GOSTA", "SEGREDO"。もう、とにかく盛りだくさんである。やりたいことは沢山あるけど、今回はまあこのくらいでいいか、という余裕さえ感じられる。何とも引き出しの多そうな男だ。

 なんて文章を書いていたのだが、その矢先、信じられない出来事が起こってしまった。11月2日、彼が火事で焼死してしまったのだ。享年38歳。未だに信じたくはないが本当の話だ。プレス発表によると完成させたばかりのベベウ・ジルベルトの新作のマスターデータを救うため、火の中に飛び込み、そのまま、かえらぬ人となってしまったということだ。自分の命を捨ててまで音楽を選ぶ男。人となりはおろか写真すら見たことがないが、そんな死にざまをするなんて、根っからのミュージシャンで、いつも仲間達と音楽のことばっかり話してるようなナイスガイだったに違いない。マルコス・スザーノ等を従えて行う予定だったツアーとともに、ベベウの新作も幻となってしまったのだろうか。それでは、彼が何とも哀れではないか。焼け跡からそのプロデューサとしての最後の音源が発見されることを願いつつ、この最初で最後になってしまった彼のリーダ作を聴きながら、本当に心から彼の冥福を祈りたいと思う。.