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若き天才ピアニスト、セルジオ・メンデスは正直言って悩んでいた。既に成功を収めていたトム・ジョビンの後を追いジャズ・サンバのイデオムで合衆国に殴りこみをかけたもののブレイクには結びつかず、西海岸のラウンジで演奏を重ねる日々を送っていた。そんな彼の前に現れたのが、メキシコの音楽「マリアッチ」をアメリカナイズし「アメリアッチ」として売り出していたハーブ・アルバート。彼の助言に従ったセルジオはバンドを再編、ブラジルのスタンダード曲に加え、ビートルズなどのポップスをブラジル風味で演奏、またたく間に60年代を代表する全米の人気グループとなったのだった。
“ブラジル音楽”を意識する前から、ジョビンとセルメンは耳にしたことがある・・、そんな方も多いのでは。昨年ナイキのCMで「マシュケナダ」を流した際、あえてタンバ・トリオのヴァージョンを使ったのは、こちらの大々ヒットを踏まえてのこと。DJがよく使う手?アストラッドとセルメンはMPBアーティストではないと否定する気持ちをとっぱらって、素直に楽しめる一枚。華やかな女性コーラスを従えて、ポップな感覚で聴かせる手法の裏側に、セルメンはブラジル人としての誇りを忘れていないと感じる。
金のために身を売ったと言われようが、アメリカ資本主義にしっぽを振ったと言われようが、セルメンの選んだ道は間違っちゃいない。これほどワールドワイドに通用する良質のポップ・ミュージックを作り上げたんだから。ジャズもロックもお芸術を指向し始めたあの時代に、あっぱれ商売人と言いたい。やっぱセルメン〜バカラック〜ジム・ウェッブって、最高のアメリカンポップだわ。