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オヤジになると不必要に頑固になったり、新しいものに手を出せなくなったりと兎角悪い印象しか無くて「あぁ、オヤジにはなりたくないなぁ。」と思ったりする。でも、カエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルは「オヤジな」年齢なのに柔軟な頭を持ち、新しいものをなんでも吸収してしまう器を持ちあわせているようだ。2人の希有な共作盤は革新的でもあり保守的でもある。つまりは、すげーカッコイイって事。「あぁ、こんなオヤジになりてぇ!」
このアルバムが日本のレコード店に並んだ1993年は、人々はようやくバブル経済の終焉を理解ながらも、まだまだ楽観的な気持ちで過ごしていたと思う。わたしは難航した就職活動から開放されて気楽なOL生活を送りつつ、ひとりでMPBのドアを開けようと手探りしていた頃だ。言いようのない衝撃が与えられ、カエターノとジルの名前はわたしの胸に深く刻まれた。静かで重いつぶやくような歌を、異様な音楽だと思いながらも何度聴いたことだろう。歌詞カードを片手に彼らは何が言いたいかと耳を傾けた。デビュー当時から、真摯に現実社会を見つめる人間であろうとする彼らの視点を端的に表しているのが本作品だ。ユーモアと好奇心を忘れない二人であることも。
音楽それ自体に外側からあれこれ意味付けすることにどれほど意味があるのか疑問に感じることもあるし、歌詞がどうだからとほじくり返さなきゃわからない音楽ってのもどうかと思うこともある。このアルバムも色々語られることが多いわけで、もちろんそういう位置付けの作品であることは百も承知の上で、なぁんも考えずに聴けば、そこには若い頃と同じ好奇心で音楽と戯れる二人の男がいるだけ。